シリーズ記事「比べる幸せ・比べない幸せ」
第1回:比べる幸せ、比べない幸せ
第2回:優越感で安心することの意味――比べる力を燃料に変える方法
第3回:比べない幸せを日常で増やす習慣
第4回:子どもの教育と「比べる心」
第5回:アートが教えてくれる“幸せの本質”
子どもを育てていると、どうしても「比べる心」に揺れる瞬間があります。
成績、受賞、運動の結果、友達との関係…。
誰かより上手くできたときにホッとしたり、
逆に劣って見えると焦ったり。
それは、親である私たち自身も同じです。
けれど、教育の現場で子どもたちと向き合う中で、
私はしだいに気づくようになりました。
“比べる心”の中にも意味はあるけれど、
それだけでは見失ってしまう大切なものがあることに。
目次
「比べる教育」に染まりやすい時代
現代の教育は、どうしても“比較”の中で進んでいきます。
テストの点数、順位、偏差値、SNSの「いいね」の数──。
子どもたちは、生まれたときから「比べられる世界」で生きています。
努力が結果に表れることは大切です。
しかし、そこに“誰かと比べての優劣”が加わると、
「勝たなければ」「もっと上を目指さなければ」と焦りが生まれます。
その焦りがやる気を支えることもありますが、
度が過ぎると、いつのまにか“自分を肯定する力”を奪ってしまう。
子どもの笑顔が減り、
「どうせ自分なんて」と言葉にするようになるとき、
その裏にあるのは、過剰な「比較の疲れ」です。
比べることで生まれる力と、その限界
私自身も、子どもたちが表彰されたり入賞したりすると、
心から嬉しくなります。
「よく頑張ったね」と抱きしめる瞬間、
その喜びの中に“比べる幸せ”があることも確かです。
比べることは、モチベーションになります。
「次は自分も頑張ろう」と思えるきっかけにもなります。
けれど、比べる幸せは一瞬の高揚であり、
気づけば次の目標、次の比較へと心が走り出してしまう。
それはまるで、坂道を上り続けるようなものです。
景色を楽しむ余裕もなく、
ただ「まだ上がある」と思いながら前だけを見てしまう。
人と比べて得られる満足には限界があり、
その先にあるのは「もっと」の連鎖。
それは、幸せではなく“焦り”の延長線上にあります。
子どもの“唯一無二”を見抜く目
教育現場で長く子どもたちと関わる中で感じるのは、
「誰かより上手いかどうか」よりも、
「どれだけその子らしさが表現されているか」の方が、
ずっと大切だということです。
同じテーマの絵を描いても、
使う色や線の強さ、発想の自由さは一人ひとり違う。
その“違い”こそが、子どもの個性の種です。
親がその芽を見つけ、
「上手いね」ではなく「あなたらしいね」と言葉をかける。
それは、比べない教育の第一歩。
“結果”ではなく“存在”を認めるまなざしが、
子どもの心の土壌を豊かにしていきます。
アート教育が教えてくれる「比べない成長」
アートの世界には、「正解」がありません。
同じお題を与えても、10人いれば10通りの答えが生まれる。
だからこそ、子どもは自分の内側を見つめる力を育てます。
誰かの作品を見て「すごいな」と感じたとき、
その感情を“劣等感”ではなく“インスピレーション”に変えること。
「私もやってみよう」と思える心の動きが、
本当の意味での成長です。
アート教育は、子どもに“自分を信じる感性”を教えます。
それは、社会で生きていく上で最も強い武器の一つ。
比べなくても、自分の中に確かな光があると知ること。
それが、自立と幸福の始まりです。
親ができる“比べないまなざし”の育て方
親が比べることを手放すとき、
子どもの心にも変化が生まれます。
テストの点を聞く前に、
「今日の学校、どんなことが楽しかった?」と尋ねてみる。
誰かを褒めるより、
「あなたが頑張っている姿が素敵だね」と伝えてみる。
そんな小さな言葉の積み重ねが、
“比べない幸せ”を生み出します。
そして、親自身も自分を比べすぎないこと。
完璧な親でなくてもいい。
仕事と家庭のバランスに迷ってもいい。
その揺らぎの中に、等身大の愛情があります。
子どもの笑顔は、親の心の鏡です。
「誰かよりも幸せ」ではなく、
「今この瞬間を大切に生きている」──。
その実感こそが、家庭に本当の豊かさをもたらします。
シリーズ記事「比べる幸せ・比べない幸せ」
第1回:比べる幸せ、比べない幸せ
第2回:優越感で安心することの意味――比べる力を燃料に変える方法
第3回:比べない幸せを日常で増やす習慣
第4回:子どもの教育と「比べる心」
第5回:アートが教えてくれる“幸せの本質”

















